関係代名詞は英語の代表選手

前からイメージしながら読んでいく英語の特徴を、最もよく表しているのが関係代名詞です。関係代名詞を正しく理解すれば、英語の本質を理解できたと言っても過言ではありません。

関係代名詞には中学校で習う制限用法と、高校で習う非制限用法があります。制限用法と非制限用法の違いは文法の参考書にも書いてありますが、違いがよくわからないという人も多いのではないでしょうか。わかりにくくなってしまう原因は、中学校で習う時に、間違った教えられ方をしているからです。

関係代名詞の制限用法

関係代名詞は「2つの文をくっつけた文」だと習った人が多いのではないかと思います。確かに、文法的に解析するとそうなっています。文法中心の日本の英語教育ではそう教えるしかありません。しかし、関係代名詞は「単に二つの文をくっつけるための文法要素」ではありません。

前から順に読んでいってイメージを作っていった時、足りないイメージを完成させるために使うためのものです。したがって、前から順番に読んでいかないと、文章を書いた人の正確な意図を読み取ることができません。日本語的に考えて、「後から前に修飾する」という読み方をしてはいけないのです。

例えば、

The boy is Yoshihiro.
【その少年はヨシヒロです】

という文があったとします。しかし、その場に少年がたくさんいた場合、「その少年」だけでは人物が特定できないため、どの少年がヨシヒロなのかわかりません。

The boy who comes from Kagoshima is Yoshihiro.
【その少年 どの少年かというと 来ている 鹿児島から は ヨシヒロです】

というように、関係代名詞を使えば、たくさんいる少年の中から「鹿児島から来た少年」として、ヨシヒロを特定することができます。

関係代名詞の制限用法は、補足説明をするために使われているわけではありません。その場に少年がたくさんいて、どの少年かを特定しなければいけないので必要だから使われています。

学校で習った訳し方だと、「鹿児島から来た少年はヨシヒロです」となりますが、この訳では、その場にいる少年が一人なのか複数なのかわからず、正確なイメージを作ることができません

関係代名詞の非制限用法(コンマつきの関係代名詞)

少年を「特定する必要がない場合」は、関係代名詞の非制限用法を用います。

The boy, who comes from Kagoshima, is Yoshihiro.
【その少年 (彼は 来ている 鹿児島から)はヨシヒロです】

こちらは単なる補足説明なので、難しい箇所はないと思います。

The boy is Yoshihiro. He comes from Kagoshima.

としても内容的に同じです。

制限用法の場合は、二つの文に分割すると意味が変わってくるので単純分割はできません

一夫多妻制?

制限用法と非制限用法の違いがはっきりわかる例を示してみます。

I have a wife who lives in Kobe.

学校で習った方法で訳すと「私には神戸に済んでいる妻がいます」になります。

妻が神戸に住んでいる状況として、別居か単身赴任が考えられますが、特におかしな文ではありません。

しかし、前から一語一語読んでいくと、、、、

【私には ある妻がいる どの妻かというと 住んでいる 神戸に】

文法的にはおかしくないですが、状況を考えるとちょっと変です。I have a wife. としただけでは wife を特定できないために関係代名詞の制限用法を使っているということになります。つまり、特定できないということは、「私」には妻 がたくさんいるということになります。

コンマをつけて非制限用法にすれば妻は一人(単身赴任)になります。

I have a wife, who lives in Kobe.
【私には 妻がいる。その妻は 住んでいる 神戸に】

妻は一人しかいないのでI have a wife. だけで完結しているけど、補足説明としてwho lives in Kobe を付けたしいているという状況です。

コンマのない which, who などの関係代名詞が出てきたら、「どの~かというと」というように置き換え訳をしていき、コンマ付きならば、「その~は-だ」というように置き換え訳をしていけば制限用法、非制限用法の違いをはっきりと区別できます。

住んでいた少年?

限定用法の使い方がよくわかる例をもうひとつ紹介します。ハリーポッターの原作、第一章のタイトルは、『THE BOY WHO LIVED』です。

中高生に直訳すると「住んでいた少年」「生きていた少年」と答えることが多いです。世界的にヒットした小説のタイトルとしては味気ないですね。

これを、前から順に置き換え訳をしていくと、

しかし、少年が生きているのは当たり前の話なので、物語内のタイトルとしては???となります。

これを、前から順に置き換え訳をしていくと、

【その少年 どの少年かというと 生きていた】

となります。「生きていなかった」人たちがたくさんいるということを暗に示していることになり、意訳をすると「生き残った少年」となります。

松岡佑子氏の訳では「生き残った男の子」となっています。

ネタばれになるので詳しくは言いませんが、物語の内容を知っている人なら納得のタイトルです。

タイトルを「A BOY WHO LIVED」 としても成り立ちますが、「a」ではなく「the」を使っていることにも注意してみてください。松岡氏の訳には、「a」と「the」の違いまでは表現されていません。

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